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人生の研究所へようこそ!
本日は、BOOKレビューです。
フィンランド人はなぜ午後4時には仕事が終わるのか
をご紹介。
- ワークライフバランス世界No.1
- 有休消化100%
- 在宅勤務3割
- 残業はなし
- 夏休みは1ヶ月
- オープンでフラットな組織
- それでもって1人あたりGDPは日本の1.25倍
そんな超ホワイト企業ならぬ
超ホワイト国家があるのです。
その国こそ
北欧は「バルト海の乙女」とも呼ばれる
フィンランドです。
堀内都喜子さんは
フィンランドへの留学経験があり、
その居心地の良さから
5年間滞在されたとの事。
その生活の中に見た
幸福度ランキング世界1位の
背景や現状を本書でつづられています。
著者は帰国後も
フィンランド系企業で8年間勤められ、
現在はフィンランド大使館で
広報をご担当されています。
INDEX
皆さんは何を思い浮かべますか?
- ムーミン
- マリメッコ
- サウナ
- イッタラ
- 北欧インテリア
- ノキア
などでしょうか。
日本でも馴染みの深い名前が
上がってきますね。
そんなフィンランドの
幸福度世界1位たるゆえんを
知る事で、私たちの生活や
働き方に新たな視点をもたらす
そんな本書をご紹介しましょう。
本書は2020年の発行のため
2年連続(2018、2019)とあるが
実は2020、2021と4年連続で
幸福度世界一になったのです。
幸福度世界1位になった事に対して
特別な何かを感じているわけでもないとの事。
それだけごくごく当たり前の事なのかもしれません。
- 安定
- バランス
- 平等
- ゆとり
これらのワードが関連して出てきたとの事です。
どんな環境で生まれ育ち、どんな地域に住んでいても
教育や福祉のサービスの機会は平等で、最低限の生活が保証されている
そんな制度が国民生活に安心感や平等さを感じさせるのです。
仕事、家庭、趣味を楽しむワークライフバランスが
とりやすいのも理由です。
豊かな自然が身近にあり、自然を感じながら
仕事とのON・OFFを切り替えるゆとりある生活
もその一因と言えます。
フィンランドの一人当たりのGDPは
約5万ドル(2021年は約5.3万ドルでした。)
と日本の約4万ドルの1.25倍に上る。
フィンランドは天然資源が乏しく
豊かな森林と水を活かした
紙・パルプ・木材産業。
かつて携帯電話で
世界シェアを牛耳っていた
ノキアなどの通信、
精密機械、電子機器の他
金属、電気などの
輸出産業に支えられている。
日本でも有名なアパレル
マリメッコや
ガラス製品のイッタラ、
陶器のアラビア
家具のアルテックなど
北欧デザインはブームの
火付け役を担い
経済を牽引している。
幅広い分野でスタートアップ企業が
世界的に成功を遂げています。
環境、医療、教育、衛生事業など
特にIT関連のMaaS分野では
先進的な企業が注目を浴びています。
ゲーム産業ではRovioやSupercellなど
世界で大ヒットメーカーが誕生。
フィンランドの地理的位置は
西にスウェーデン
東にロシアに挟まれた
位置に存在します。
その歴史は、
両国からの侵略と支配の
繰り返しの歴史でした。
欧州の中でもかなり貧しい国でした。
スウェーデン統治時代を経て
ロシア帝国の支配下になります。
ロシア帝国から独立を宣言するも内戦の勃発。
ソ連との冬戦争
ソ連との継続戦争
敗戦国となりました。
ヘルシンキで夏季五輪が開催され
経済成長へ進んでいきます。
ソ連崩壊の影響と
世界経済の低迷を迎え、
大量の失業者を出す事になりました。
EUに加盟。
リーマンショックの影響で
再び不況に見舞われましたが
現在は、政府の支援もあり
ベンチャー企業の躍進が
経済を牽引しております。
こうしてフィンランドは
幾度となくの困難に直面しながらも
克服し乗り越え
成長を遂げてきたのです。
地理的にも遠く
歴史も民族も言葉も
日本とは異なりますが
著者によると
フィンランドは
日本と似ているところも
多くあるとの事です。
少しシャイで真面目
謙虚な性格
勤勉で努力家
沈黙を好む
褒められる事や自慢が苦手
豊かな自然、森林、海、湖
森林以外の資源に乏しく
エネルギー源も輸入に依存
こう見ると
かなり共通点がある様に思いますね。
なんだか親近感が湧きます。
では、なぜこの様に
日本と共通点がありながらも
フィンランドは世界一の
ワークライフバランスを実現し
超ホワイト国となれたのでしょうか。
日本との違いやその背景を見てみましょう。
タイトルの通り、
フィンランドの人は
本当に午後4時以降は
事務所にほとんど人がいないとの事。
先進国でありながら、
どうしてそのような事が
実現可能なのでしょうか?
1日8時間、週40時間以内の勤務時間
よほどの理由がない限り、
残業をしてはならない
させてもならない。
官公庁、大企業、中小企業でもそれは変わらない。
しかも、多くの企業の平均勤務時間は
なんと37.5時間/週だという。
週35時間の休憩、
就業から始業までのインターバル11時間
が決められているとの事。
どうしても残業が必要な場合はあるとの事で、
その場合は、上司の許可をとるか
上司らかの要望の場合は、
本人の同意を事前に確認する必要がある。
残業は、お金もしくは休暇で補償される。
企業はコストを削減する上でも
残業や休日出勤は避ける傾向にあるとの事です。
就業時間の半分は、
働く時間や場所が、社員と会社との相談で
自由に決める事ができる。
フィンランドには従来から
カハヴィタウコという
コーヒー休憩の文化がある。
コーヒー休憩は
企業が社員に保証しなくては
ならない法律上の決まりなのです。
企業と人事、各社員が協力して
最大限の能力を発揮できる様に
勤務時間を使って
レクリエーションデイ(観光やスポーツ観戦など)や
リトリート
(ランチタイム等を使った
社内改善のための話し合い)を
積極的に行っています。
今でこそ日本でも
取り入れる企業は増えてきた
フリーアドレス。
自分の固定の席を持たずに
自由に働き場所を選択できる。
自分の仕事の専念したり、
他部署との情報共有や
コミュニケーションにおいて
メリットがあるとの事。
立って仕事をする人もいるという。
フィンランドではコーヒー休憩以外にも
タウコユンパという
エクササイズ休憩があるとの事です。
回復促進、緊張や痛みの緩和、
エネルギー増進、疲労や物忘れを防ぐ
などの効果を生み、生産性も向上する
メリットがります。
電話やメールから解放されて
社外でミーティングをやったり
サウナに入って裸で向き合い
リラックスした状態での会議もあるとの事。
創造性のある議論などには
良いとの事です。
企業や組織は、階層をできるだけ作らず、
それぞれを信頼して裁量を与えて
上司は細かく管理をしない。
業務内容や責任範囲が明確で
決定までに時間がかかる事は少ない。
若手が重役に抜擢されることもあるという。
それは政治の世界でも同じだそうです。
著者の感じたフィンランドと日本での
働き方の違いをご紹介します。
どちらが良い、悪いといった事でなく
まずは、違いを知る事から始めましょう。
細かな部分を詰めて
計画をきっちり立てて進める
ある程度固まるとスムーズに進むが
柔軟性に欠け、修正や後戻りがしにくい
大枠から考えて、徐々に細かいところを詰める。
きっちりした計画はあまり立てずに
まずは着手しトライアンドエラーをくり返し
ブラッシュアップしていく。
相手に納期の延期を要望してでも
完璧に近いものを仕上げようとする。
最低ラインの完成度を超えていれば
締め切りまでに間に合わせる。
まず一回目は顔合わせ、その後も
顔を合わせての報告を希望する事が多く
関係づくりを重視する。
面談中も世間話をしたり、
お見送りをしたりするのが
慣習としてあります。
挨拶だけの面談はせず、
要件をメールや電話で済ましたいと考える。
フィンランド人も顔を合わせる重要性は
理解しているが、
一度は顔を合わせる事はあっても
世間話などはせず、要件が済めば
ドライに帰る。
たいした用件や議題がない場合は
面会でなく、効率を優先する。
なかなか本題に進まず、
決定が行われない。
会議中に目を閉じている人も。
挨拶だけの面談はせず、
会議は議論をして、何かしら決定や
結果を求める場所。自己紹介や
資料を読み上げる場所ではない。
フィンランドの有名企業13社が参加し
良い会議についてのルールを提案した内容を
ご紹介します。
会議の前に
- 本当に必要な会議なのか、開催の是非を検討
- 必要ならば、会議のタイプと相応しい場所を考案
- 出席者を絞る
- 適切な準備をする。議長は、参加者へ事前通知し必要に応じて責任を割り当てる。(会議によって内容は異なる。)
会議のはじめに
- 会議の目標を確認(会議終了後、どんな結果が生まれるべきか)
- 会議の終了時間と議題、プロセスの確認。(アイデア出し、ディスカッション、意思決定、コミュニケーションのどれに当たるかを参加者へ知らせる。)
会議中に
- 議論と決定に全員を巻き込む。一部が支配せず、各自の多様性を考慮に入れる。少人数、隣同士との議論を通して意見を表明する機会なども作る。
会議の終わりに
- 結果や、その役割分担をリストアップし明白にする。
本書より引用
これらの働き方は
今でこそ日本でも
取り入れる企業は増えていますが、
これはコロナ禍以前の
もっと前の話です。
それだけフィンランドでは
徹底した効率化を重要視しており、
本気で取り組んでいるのが伺えます。
フィンランド人は
「仕事は好きで、責任感を持って
仕事をきちんとしたいが、
就業時間内で終わらせて
それ以外の時間も大切にしたい。」
という考えが根底にあります。
- 家事や子育て家族団らん
- 趣味やスポーツを楽しむ
- 友人に会う
- 勉強をする
など自分の時間に費やしています。
福利厚生の一環として、
仕事以外の活動や趣味を支援しています。
多くの企業には、スポーツ・文化チケットという
社員の趣味や文化活動の
費用をカバーする制度があります。
また、社員の多い企業は
同好会などがあり、
クラブ活動に参加したりもしています。
語学や音楽、教養、文化等の
多彩な鋼材を取り揃えた
生涯学習の学校があります。
毎週1回の講座で
月5,000円程度と
非常に安いのです。
フィンランド人の平均睡眠時間は
大人で7時間半以上と長く、
キャンドルを灯したり
暖炉に火を入れたりして
居心地の良い空間で
リラックスして夜を過ごしています。
フィンランドは身近に自然があり
お金をかけずに
アウトドアスポーツが楽しめます。
海や湖の天然のプール
冬は天然のスケートリンクや
穴を開けてアイスフィッシング、
クロスカントリースキーも
ジョギングの様に楽しまれています。
フィンランドは、一軒家や
広いマンションには
サウナがある家が多い。
フィンランドでは
伝統的に土曜日に
サウナでリフレッシュする。
フィンランド人は、
有給休暇をほぼ消化して
夏に長期休暇をとります。
1年は11ヶ月と割り切っているほどです。
上司や同僚と調整しあって
頑張って働いて、しっかり休む。
企業もそれが社員の
モチベーションにつながるという
風土があります。
トイレや風呂場の改修や
ペンキ塗りを家族総出でやるのも
フィンランド流。
DIYが盛んなのです。
法制度や働き方、
休日の過ごし方を紹介しましたが
先進国であり実態は日々忙しいはずの
フィンランド人が
なぜこれほどまでに徹底して
効率化をしワークライフバランスを
実現出来ているのでしょうか。
日本も働き方改革関連法が
施行されましたが
実態は伴ってない企業は
多い様に思います。
フィンランド式働き方の
その背景に迫りましょう。
このウェルビーイングは
フィンランド人にとって
とても重要視されている
価値観なのです。
そして、効率よく仕事をするために
必要な大きなカギであるという認識です。
一見、ウェルビーイングと
効率的な仕事は相反する様ですが
フィンランド人にとっては
どちらも甲乙はなく
同じ位置にあるものなのです。
それは彼らが、
ウェルビーイングは
最も幸福度を上げる方法であると
知っているからです。
徹底した効率化の追求の原点は
ここにある様に思います。
フィンランド人は
高い権利意識をもっています。
有給休暇は100%行使するのが当然。
在宅勤務やフレックス制を活用して
家事、育児との両立。
パワハラやマタハラなども
全く無い訳では無いとの事ですが、
すぐに公的機関に訴える事に
躊躇はありません。
それは、単に日本で言う
「義務を果たさず
権利を主張する」的発想でなく
法制度やルールに対する
ロイヤリティの高さであると
私は感じました。
企業も社員も
同じ目線での認識なのだと思います。
シスはフィンランド人の
アイデンティティとして
語られてきた精神で、
2度に渡るソ連との戦争や
独立を死守したことからも
その強い精神力を
感じる事ができます。
そして、シスは容易に口に出して表現する言葉でなく
うちに秘められている気持ちというニュアンスで
「行動で示す」ことが伝統的に継承されている。
どこか日本のサムライ魂や
武士道にも通じるものを感じますね。
フィンランド人の
仕事も家庭も趣味も勉強も
何もかも本気で取り組む姿勢こそ
シスそのものであり、
ポジティブに貪欲に生きる
その自分たちの強い意志が
国を、そして人生を
良いものにしようという
共通認識の根幹に
シスの精神があるのです。
フィンランドでは、
性別、年齢、経験に関係なく
とにかく相手を信頼して任せてみるという
風潮があるのです。
実力や成果が評価の対象となります。
そして失敗しても再チャレンジできます。
フィンランド人はやり直すことに不安はなく
世間も受け入れてくれるのです。
フィンランド人は、
あまり周りに頼らず
自分の気持ちに従って、
最後までやり遂げる
自立した気質があります。
能動的に動く事が当たり前で、
それを強く求められているのです。
学校や就職も自分で調べて
資料を取り寄せ、自ら行動します。
人生設計も千差万別、
何かのレールもなく
自分が望む形のため
努力をして行くのです。
学校紹介や会社説明会、
就職支援企業などは
ないのです。
むしろ自分で取り組む事に
楽しみさえ見出している。
著者は、日本ではすべて揃っていて
準備され、誰かがコーディネートしてくれる。
その文化は素晴らしいと言っています。
ただ、型から外れることのできない
危うさも感じたのも事実と言っています。
フィンランド人は、
できるだけ新しいものを
買うのではなく
あるもので対処する
風習があります。
昔から使っているものを大切に
ずっと使用したり、親戚や友人から
譲り受けたものを使うなどします。
なので、贈り物なども
安くはないが長く使えるブランドのもの
などが選ばれるそうです。
この価値観は、
ファッションや家具
建築などのデザインの源であり
サスティナブルな社会づくりの
軸となっています。
ミニマリストの原点を見る様ですね。
- 価値観やライフスタイルはより多様化し
- 高齢化が進み
- 労働人口は減少傾向
- 企業は人材確保や生産性向上が必要
そのため、企業はより個人に
照準をあわせた条件提示へと
シフトしていくでしょう。
日本もとても似ていますね。
フィンランド人の生き方に対する姿勢は
国民一人ひとりの幸福を実現することへの
比類なき忠誠心と気高さを感じました。
日本も今、働き方改革をうたい
長時間労働の是正、
多様で柔軟な働き方の実現、
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
に向けて着手しています。
しかし、現実はなかなか浸透していないの
実態ではないでしょうか。
制度や形をそのまま当てはめる事は
難しいでしょう。
歴史や文化、民族性が異なります。
しかし、仕事も人生も大切にする事に
真剣に向き合う事はできます。
職場を、家庭を、自分自身を
より良いものにするために
積極的に能動的になる事が
日本人に必要なのかもしれません。
そうして行くうちに
企業と社員は
国と国民は
率直にコミュニケーションを図り
公正なルールに則って、
信頼と合意のある関係を
築く事が出来るでしょう。
かつての日本式の企業形態
年功序列、終身雇用は徐々に
終わりを迎えようとしています。
変化の出来ない企業は
信用を失い淘汰されるでしょう。
世界一のワークライフバランスを
実現している国フィンランド。
その根幹には、
ウェルビーイングとそれを実現する
強い意志(シス)があります。
信頼と平等、個人を尊重し
つねに改善の努力を惜しまない姿勢と
シンプルかつサスティナブルな
暮らしで自分自身を大切にする事、
そして、家族を社会を自然を
こよなく愛する事が
幸福度世界一の国づくりに
繋がっているのです。